2023.1.29
こどもが見せてくれる

塩沢 節子

川崎幼児園チューリップルーム園長

自宅から次女と始めたチューリップルームは、1歳から6歳の縦割り少人数保育。自分で考え行動する子どもになるよう、お母さんと共に学び育ち合う園として25年。横浜市に小規模認可保育園3園開設。

マツダヒロミ氏共著 「子どもの考える力を伸ばす魔法の質問」(PHP出版)

チューリップルーム園長 塩沢節子さん

 

――今日のみずのたまは、私の大好きなお友達「しお」こと塩沢節子さんに来ていただきました。では自己紹介からお願いします。


はい、今、川崎市で幼稚園を運営してます。それから横浜で、小規模認可保育園を3園運営してます。

――今日、お邪魔しているここは?

宮前平にある無認可の幼稚園。名前はチューリップルームです。

――始めたのは何年前ですか?

25年になります。
もともとすぐ近くに住んでいたので、最初は自宅で始めました。マンションだったのでちょっとうるさくてダメって言われて、探してここで始めた感じです。

■■「悪いことはするけど、悪い子じゃない」■■

――なぜ自分で幼稚園を始めようと思ったんですか?

私は、もともと保育士だったのですけどね。
うちには娘が二人いるんですけど、その下の子がどこかに預けたいと思った時に、“怪獣ちゃん”だったんですよ。女の子がね。

“怪獣ちゃん”で、叩いたり噛みついたり、悪いことしちゃう元気な女の子だったので、どこかに入れたら絶対問題児扱いされちゃうっていうふうに思って。

悪いことしたら怒られるのは、当然。みんなに怒ってもらいながら育つのはいいんですけど。

次女はメイっていうんですけど、「メイは悪いことはするけど、悪い子ではない」っていう気持ちがすごくあって。

もともと現場の人間だったので、その問題のある子をどう扱うかっていうとこでは「怒られる」。「絶対メイちゃん、ずっと毎日怒られてるよね」って思った時に、なんか嫌だなって。

それまでも、いろんな現場を見てきているんですけど。自分の中で、「あそこが違う」「ここが違う」「あんな声かけないよね」とかっていうのを、自分の中でなんか悶々と思ってたんですね。

で、その次女のことがあった時に、「そうやってね、文句ばっかり言ってるんだったら、自分でやれば?」って。自分に対してのツッコミがあって。

・・・そうだよね。多分どこを見ても私はそれを言うから、「だったら自分でやるしかないね!」っていうふうに思ったのが25年前です。

■■ 幼稚園★自分で作ちゃえ♪■■

――保育士の経験があるとはいえ、自分で幼稚園を作っちゃうって、相当な冒険ではなかったですか?


そうなんですけどね。とりあえず自宅で始めて、仲間もいたので。

次女のことも一つの大きな理由ではあったんですけど、その前から絵本の勉強会とかで、「塩沢さん、なんかやってみて」みたいな、ちょっとお母さん達からの後押しもあって。

「え?なんかやったら、来てくれるって?」「もう、行く~、行く!預けたい」みたいな感じもちょっとあったんですよね。それも一つですね。理由の。

――じゃ、そんなに大冒険でもなく、自然の流れ?周りにも後押しされて?


うん。ただ、今振り返ると、一番ドキドキしたのは手書きでチラシ作ってね、誰にも相談しないで「チューリップを家で始めます」っていうのを近所のお友達とかに配ったんですね。その時が一番ドキドキしたかも。

――それは来てくれるかしら?っていうドキドキ?

そうね、そうだし。もう本当にできるのかなとか。

あと、ここにもあるんですけど、最初に小さい子供用の椅子をね、自宅で買って。5個か6個ぐらい並べた時に、「誰も来なかったらどうしよう」ってちょっと思ったんですよ。準備をしててね。

でも、まあ下の子が一緒にいるので、誰も来なかったら二人で毎日保育園ごっこすればいいやって。ここにクマさんのぬいぐるみ、ウサギさんのぬいぐるみとか座らせてすればいいやっていうふうに、すぐに思ったから。

まあ今思うと、あんまり何も考えずにやり始めたって言ったらそうかもしれないですね。

■■ 3つの「だいじ」■■

――25年やってきて、ここチューリップルームの特徴というか、「しお」が大事にしてきたことってどんなことがありますか?


もともと自分で始めた理由の中にもあるんですけど、子供達を育てるっていうのが保育現場なんですけれど。心を育てるっていう点では、今まで見てきた現場の中では、大人が「あれをしろ」「あれをするな!」「これをしろ!」みたいな指示をしていって動かしていくっていうところに疑問はなんとなく思っていて。

心を育てるっていうかな?そこを大事にしたい。それで、3つ大事にしてるんですけど・・・。

――1つ目は?

一つは感情を大事にすること

子どもは怒ったり泣いたり、喜んだり、笑ったりする。大人って、子どもがご機嫌がいいと楽しいじゃないですか。でその時はいいんだけど、怒ってたり喧嘩したりとか大泣きする時って嫌じゃないですか?

子供がひっくり返って泣いてる。でもそれも喜ぶのと同じように、「泣くのも怒るのも大事だよ」っていうことを大切にする。

だから泣かせないようにするとか、怒っちゃ駄目なんだとかっていうふうな、偏りをすごく無意識に感じてたので、そういう意味で、「けんかしてもいいよ」って思う。

「みんな仲良く」ってのがテーマにあるんですけど、みんな仲良くになってはいくんだけれども。でも、最初からどこの誰とも分からないけれども、最初から仲良くやろうよってのは違う。

この子のことは好きじゃない」っていうことも言っていい。だから遊びに入れてとか入れないとかっていうのも、子供達の心で決めていって。

じゃあ入れてもらえなくて泣いちゃったら。「あぁ、入れてもらえなくて泣いちゃったね。悲しかったね」っていうとところからまた始まる。それで傷ついちゃうとかかわいそうとかって言うんではないんですよね。

それが大人の言う通り今ここで「いい子にしてたらいいよね」とか「笑ったら正解だよね」っていうのを真面目な子ほどね、無意識にそれを自分らしさだと思って生きていっちゃうと、本当に自分が何をしたいのかとかっていう時に迷っちゃうだろうなってすごく思ってるので。

お母さんや先生がどう思うと、「私は嫌なものは嫌だ」っていうことを大事にして。

――2つ目は?

2つ目は、「自分で決める」っていうこと。そこもやっぱり心に繋がってるんですけどね。

食べること、食べる量とか物とかね。それからトイレに行くことだったり、この子と手を繋ぎたいとか繋ぎたくないとか。全部自分で決める。

よく言われるんです、「じゃ約束ないんですか?」って。園庭がないので公園で遊んだりする時には約束はしっかりあってね。危険なこととかね。いろんな約束があるんだけど。

それ以外の例えば公園に行って公園で何をして遊ぶか?お部屋の中で何して遊ぶって。

自由な時は「何をしてもいいよ」って。何をしてもいいけど公園の外行っちゃったりね。部屋から勝手に出て行っちゃうのはもちろん駄目ですよっていうことがあるだけ。

あと体のこともね。食べる量とかトイレに行く行かないことも。別に大人が指示して「今トイレ行ってください」とかね。「これぐらい絶対食べなきゃ駄目だよ」っていうのもないので、たくさん食べる子もいれば少食の子もいるし。

外で元気に遊びたい子もいればお部屋でしっかり遊びたい子もいたりするじゃないですか?

そこのところはどうする?今日は外に行きたい?行きたくない?お部屋にいたいっていう人とか。ニーズ的に叶うんであれば、それを尊重しているっていうところですね。

※インタビューの日は「しお弁」の日。手作りのおかずとごはんを持参のお弁当箱に詰めて、先生もこどもも一緒に食べる。公園で食べることもあります。おいしかった~♬(ほーりー)

――3つ目は?

3つ目は体験を大事にしている

頭でね、「こうだよ、ああだよ」って「優しいね」とかっていう言葉って、もう4.5歳になると、大人になっていく準備段階で、ほとんど人間としてできてくるので、分かるんですよ。何がいいんだろうって分かるんだけど。

でもリアルに勝るものはない

「泥ってこんな感じだよね」って触ってみなきゃ分かんないし。寒い所走ったらなんか鼻水垂れてきちゃったとかね。走ったらすごくドキドキするとか、汗かくとかっていうのも、体験してみないと分かんないじゃないですか。

今の子って、カエルってとかでんでん虫とかみんな知ってるんですよ。絵も描ける、歌も歌える。

だけど、じゃあリアルにカエルを手にとったりとかでんでん虫を触ったことありますか?っていうと多分ほぼほぼないんですよね。

だからそういうリアルな体験をして、頭だけじゃなくてまずはその五感を刺激して体験をしていくっていうことを大事にしてます。頭だけじゃなくて、頭は後からいくらでも知識とか学ぶこことはできるので。

■■「しお」が楽しいと、こどもも楽しい♪■■

――そんなチューリップの中で園長先生はなんて呼ばれているのですか?


私は塩沢なので、「しお」です。スタッフももちろん、お母さん達からも「しお」って呼ばれてます。

――「しお」が一緒に遊んでくれると嬉しい?それとも「しお」が一緒に遊んじゃって楽しんでる?


どっちかというと、後者かな(笑)私が楽しいと子供も楽しいし。

ただ遊んであげるとか遊んでもらっているとかね。大人だろうが子どもだろうが、どっちかが上でどっちかが下っていうことは全くなくて

子供達ってそこが特徴だと思っていて。大人になると役割があるじゃないですか。会社だったら上司がいて部下でみたいなね。これから学校に行ったら、まあもちろん先生と生徒っていう関係にもなるだろうし。

そういう所がまだできてない年代なので、まあ先輩としてちょっと先に生きてる大人として、一緒に生活を共にしていくってとこかな。

ただ危ないこととか絶対やっちゃいけないことはもちろん伝えていくんだけど、それ以外は一緒にはなって、一緒に話して、一緒にひっくり返るっていうのが私は大好き

■■ お母さん、そして地域へ ■■

――お母さんとの関係はどんな感じ?相談受けたりとか、あるんでしょうか?


それもすごくあって。もともと自分のやりたい保育をやりたいってチューリップ始めたんですけど。

子供達と遊んでるのすごく楽しいんですけど、1年、2年ぐらいすると、今度はお母さんが見えてくるんですよね。

子供たち見た時にお母さんと子供ってやっぱりすごく影響し合ってるなって思って。

役割からして子供にとってお母さんの影響は大きい。お母さんがどうであるかによってやっぱり子供の価値観って決まってくるので。

あ、これはあの子供達をどうしようじゃなくて、お母さん達に気づいてもらって、「子供ってこうなんだよ」ってことを伝えていこうってすごく思い始めて、そこからチェンジしたんですね。

お母さんが笑ってたら子供は笑う。シンプルにね。

お母さんが幸せじゃなくて、子供のためにって我慢して。「こういう声がけがいんだから」とか、「先生にこう言われたからこうしなきゃいけない」なんていうのは全然違っていて。子供の心も大事にね、嫌だっていう心も大事にするのと同じように、お母さんに対しても嫌だなとかやりたいとかやりたくないとか、丁寧に話して、それぞれでやっていく感じです。

■■ 認可保育園3園の経営へ ■■

――ところで「しお」はこのチューリップだけでなくて7年前から横浜で保育園を3園経営していらっしゃる経営者の顔ももってらっしゃるんですよね?

そう、ご縁があってね。せっかくチューリップでいいことやってるから、保育園を今作れる状態だから作りませんか?っていうご縁で。その人が保育士さんを集めて場所を決めてって、認可を受けてって。色々最初は厳しかったですけどね。

――それはチューリップで自分の理想の保育をするというのとちょっと次元が違う話になりますよね?ご苦労は多かったんじゃないですか?

そうね。苦労・・・ね。分からないことだらけ。(笑)

私は子供のこととか保育のこととか、お母さんとのこととか、心理的なことはすごく好きなので学び続けてるんで、大好きなんですけど。

そのお金のこと、経営ってことは全くの素人なので。本当にできるかなっていうところはあったし、今もあるんだけど。本当にありがたいことに、人のご縁に恵まれて、今皆さんが手伝ってくれてやってきてるてところですね。

でも悩んだことのない悩み?ここ、チューリップだけをやってる時は自分は好きでやってるからいいんだっていうね。まあお金もらわなくてもいいんだぐらいなつもりでたんですけど。今、会社として何人もの従業員さんがいてっていう中で私のやりたい、やりたくないっていうような次元だけの話ではない。

子供達もね、お母さんが働いていて、保育園で何人もの子供達をお預かりしてる状態なので、そこの責任みたいな所っていうのはすごく大きい。そういう意味で成長させてもらっています。

――慣れない経営の苦労、それを乗り越えていく原動力は?


なんだろうなあ。まあ、少なくても今できているとか続けているっていうこと自体が、それこそ宇宙レベルでOKなんだろうなって。そうじゃなかったら、自分がやりたいとかやりたくないとか以外の話でできないだろうなとはちょっと思ったりもしてるので。

■■ 講演へ挑戦 ■■

~お母さんたちに伝えたい

――宇宙の応援も入っているんですね。ところで、これからこんなことも挑戦してみたいっていうことはありますか?

ここの園のお母さんたちもそうですけどね、他の保育園の先生達やお母さん達ともっともっと繋がって、「こんなことあったんだよね」「こんなに子供って可愛いよね」とかね、お母さん達が悩んでることを「こういうふうにしたらいいんだよ」みたいなことをもう少し深く繋がりたいなっていうのはあるかなあ。

あと保育園だけじゃなくて求めてる人はいるような気はしてね。

さっきも話したけど、チューリップって普通とちょっと違ってて。「あなたが決めたことだからそれでいいんだよ」って。感情に良し悪しはないって私は思っていて。「やりたい、やりたくない」「好きだ、嫌いだ」って。

人のこと嫌いって言っちゃ、普通は駄目じゃない?(笑)でも正直、大人だって苦手な人はいるし、でも大人になるまでにその距離感はちゃんとつかんでいく

だから今は相手に「嫌いだ」「入れたくない~」って言っていいって私は思っていて。で、その後にね、小学生になり中学校になり、「自分だってそういうふうに言われたら嫌だよな」とかって思いながら修正していくのかなと思ってる。

私、実は二人娘なんです。第一子の子育てをしてる時にものすごい子育てに悩んだし、その上の子をね、「嫌いだ」って思った時があったんですよ。それをなんかの講演会かなんかで話した時、「園長先生までやってる人が我が子のこと嫌いなんて言っていいんだ」みたいなことでね。「ほっとしました」って。

その嫌いっていうのは、子供が言う嫌いもそうなんだけど、人格否定では全然なくて、「こんなことして一生懸命やってるのに、報われなくて、もう本当に嫌になっちゃうんだけど」っていう気持ちってまああるじゃないですか。家族だと。パートナーにしても、近いからね。

それも会社の中でもそういうことって必ずあって。でも嫌な顔できないじゃない?会社だったら。それはぐっとこらえて、ストレス溜めるみたいなね。

でも家族ではストレス溜めることはないわけだから。「いやだなぁ、いうこと聞かない」って。

もう本当に些細なことだけど、上の子が赤ちゃんだった時にね。もう準備万端整えてね。さあこれからお友達とランチ食べる約束してるからね、赤ちゃん抱っこしながら行こうって思った時に、「え?なんかちょっと臭いんだけど!?」(笑)

間に合うと思ったら、「ヤダ~もううんちしちゃってる~(涙)」って言って。そこからね。おむつ取り替えて、「ごめん!20分30分遅れる~」みたいな。

思い通りにならないことばかりなんですよ。子育てって

それを思った時にね。私は保育士で、子供のこと知ってたけど、24時間生活の中でそれをお母さんがずっとするっていうことのストレスの大きさって、やっぱり自分がなってみて、分かることがすごくあった。

だから嫌いと思う時があっていい。「一人になりたい」とか、「もう、どっか行って~」みたいな気持ちになるのが人間だなと思って。「それでいいんだよ」ってお母さん達に言いたいなって。私もそうだったし。

でもそれはずっと続くわけじゃないなくて仲間がいたり、たった一人の人でいいから話を聞いてもらったりとかね。ちょっと見てくれる人がいたらすごく楽になって自分を取り戻せるよって。

「私もそうだった」っていうことも言いたいなっていうに思ってます。はい。

■■ 「みずのたま」ゆるぎなく大切にしてきたこと ■■

――「しお」が等身大だからお母さんたちも信頼できる、だから人が集まってくるのでしょうね。でもそんな「しお」の笑顔の向こうに何か大切にしてきたことがあるとしたら、それはどんなことでしょう?

やっぱり子供が見せてくれたっていうことですね。

それは自分の娘達もそうだし。一緒に育ってきた子供達。

まだ個人でやってる時に1回ちょっと転機があって

ここはもともと幼稚園前の施設だったんです。幼稚園に上がった時に、すごくガキ大将だった子が幼稚園に馴染めなくて、行けなくなっちゃったんですよね。幼稚園の年中さんの時に。

「困ったね。でもそれって甘えかな」とか言いながらね、「自分の思い通りなんてならないんだよ」ってその子のお母さんとも仲良しだったので、いろいろずっと毎日のように話を聞いていた時に、その子が「しおと二人でいいからチューリップ幼稚園がいい」って言ったあの一言。

私は大人が言うより、子供の言葉ってものすごい重くて重くて、ありがたくてね。

それで、もう次の日から新しくお部屋を借りて「幼稚園をやる!」っていうのに動き出した。

あの時の気持ちとあと卒園する時にS君って言うんですけどね。もう働いてますけど、S君のおかげで今も幼稚園まで上がる年中年長があるなって思って。「しおと二人でいいからチューリップ幼稚園がいい」って言ってくれたあの子の気持ち。

あの時のあの子の気持ちは、忘れられないですね。
そこに私は支えてもらってる。

――しお、なんかお話聞きながら感動しちゃった・・・。こんな素敵なお友達がいるなんて、私、自慢しちゃいます。「しお弁」もおいしかった、ご馳走様でした。今日はありがとうございました!

「しお」が感じていること・伝えたいこと。もっと知りたい方こちらもどうぞ。

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