2021.12.28
「”生かされている命”を全う」

 栗生 隆子

発酵生活研究家

1972年生まれ/岐阜県出身
自然食材の暮らし、家庭でできる発酵生活を実践したところ、20年患った腸の難病が自然治癒力で完治する。
目に見えない菌が健康にも環境にも大切な役割をしていると知り、菌の世界から発酵への理解を深める。
命のリレーをして細胞が続いていくように「つないでいく発酵」がテーマ。
会員16000人を超えるFacebook「TGG豆乳ヨーグルト同好会」の管理人を運営した。
発酵レシピ本、雑誌、メディア、講演活動と幅広く活動中。

全国各地で『 Taccoさんの発酵教室 』を開催。
著書
『TGGヨーグルトで腸美人』 (マキノ出版)
『植物性乳酸菌で腸キレイ』 (永岡書店)
『からだにおいしい発酵生活』 (宝島社)
『腸を元気にする“つくりおき”発酵食』 (コスミック出版)
『やせる!血糖値が下がる!発酵アズキレシピ』 (扶桑社ムック)
など
雑誌 『ゆほびか』 『クロワッサン』 『anan』 『ゆほびか』 『到知』 『女性自身』などで特集を組まれる。

発酵ナチュラリストTaccoの今日からはじめる発酵生活

不調知らずの体になる 
ここからはじめる 発酵食

発酵生活研究家 栗生隆子著
家の光協会

――いつも、栗生さんのことをTaccoさんと呼ばせていただいているので、今日もTaccoさんと呼ばせていただきたいと思います。では最初に自己紹介をお願いします。

今は、発酵を日常の中で使える発酵を主にテーマにして伝えています。本を執筆したり、時々講演活動をしています。

毎日の暮らしの中で、作っていける発酵ということをテーマにしていまして。

味噌とか漬物とかになると1年に1回の大がかりなしこみになるんですけど。

私の場合は毎日の暮らしの中で、ちょっとキャベツが余った時に塩と混ぜてザワークラウトを作って保存させたり、甘酒を寝る時に仕込んで朝には出来ている、そんな暮らしをしています。

作るだけではなく、実際にそれを作ってどのように調理して使っていくのかというところで、主に私は料理の素材、そして調味料に落として発酵食品を取り入れています。

――「発酵生活研究家」。発酵の「料理」ではなく「生活」?

実は料理だけではなくって、土を育てたり、水を浄化したりと。

そちらの方にも関心があるので、発酵食品だけに特化しているわけじゃなくって、本当に「生活」、「暮らしの中の発酵」というところにフォーカスしています。

ーーTaccoさんが発酵に目覚めたきっかけを教えてください。

はい。病気を通してだったんですけども、腸を悪くしまして。で、その腸にとっていいことはないかって探してたんです。

それでも発酵食品というところには辿り着かなくって、まずは薬に頼っていたんです。

ある時物産展で、東北から来た酒屋さんに「甘酒の試飲をどうぞ」って言われて。それを飲んだことによって、何か腸がほっと落ち着く、喜ぶ感じがしたんですね。

で、今まで食べ物はほとんど受け付けなかったので、これはなんだろうと。

それでもまだ発酵食品のすばらしさには気づいていなかったんですが、麹とかいろいろ、味噌とか調べていくうちに、あ、なにか発酵食品はからだにいいんだっていう、そういうほんと、初歩のところだったんですけど、そこから始まりました。

――ご自身のその時のご病状は、差し支えなければ、どんな感じだったんでしょうか。

そうですね、下痢が止まらなくなってしまったものですから、下痢止めを安易に7年ほど飲んでしまって。

やっとその時に気づいたんですけど、抗生物質でいい菌も悪い菌も殺してしまってたんですね。

腸内環境がもうすごく悪化してしまったので、食べ物も摂ることが出来ず、栄養とかもとれないので、やっぱり寝たきりの状態。もう気力も体力もなくなってくる感じで・・・。

はい、路頭に迷いました。

病院にもさじ投げられるし、で、お薬で壊した体をどうやって治していくかっていう。

はい、もうただただ迷ってただけです。

――発酵食品を摂り入れるようになって、からだが良くなっていった?

よくなりました。

だからこそ、甘酒だけではなく、いろんな発酵食品が面白くなってきて。

実はその発酵していく過程がすごく楽しかったんですね。

作っているうちに味見をしたり。まぁ、食べなきゃいけないので、そんな風に生活で取り入れていたら、気が付いたら治ってた、っていう(笑)

――その頃ですか?「かぼちゃのいとこ煮」を毎日食べていたというのは。

そうなんです。薬には頼れないと思ってて薬は止めてたんですけど。

だいたい薬を止めたら3ヶ月とか1年で副作用もなくなるとは言われてるんですけども、何かこう3年経っても5年経っても調子が悪いというか、何か残っているなっていう感覚があって。それを取りたかったいうのがありました。

その時、食事で何が合うのか合わないのかが分からなかったので、1回ゼロに戻して、1日にひと素材、試していくことにしてんです。

今日はごぼうにして、で、ごぼうで体調が良ければそれでOKで、次にんじん食べて・・・という感じで一品一品試してったんですね。

そしたらちょうどその時、「酵素玄米」って呼ばれている、「ねかせ玄米」とも言うんですけども、玄米と小豆を一緒に炊いて、3日間ほどねかせた食べ物があるんですが、それはすごくからだに合ったのです。からだに合うだけではなくて、なぜか無性に食べたくなったんですよね。

で、もうひとつ。料理本を見てた時に、糖尿病の方の特効薬って呼ばれている、「小豆とかぼちゃのいとこ煮」ですね。それもレシピを見てて、すごい食べたいって思ったんです。

その時は多分からだが欲してたと思うんですね。

で、その日から半年間、毎日、朝昼晩食べてたんですよ。

よく、健康食をされている方って、自分に課してそれを食べてると思うんですけど、私の場合は、毎食それが飽きずに食べたかったんです(笑)。

半年毎日食べていたという「かぼちゃのいとこ煮」

――体の声が聴けるようになったということ?

からだが欲してたんですね。

食べたかったんですね。

朝起きると食べたい!って思うので。

消化がいいのかすぐお腹が空くので、当時は、私はそれが好きなんだって思ってたんですね。好きだから食べてると思ってたんですけど。

5ヶ月、6ヶ月経ったある日、何かいつものルーチンで作ってたんですけど、大量に残るようになってしまって。

なんでだろうと思った時に、私が食べてなかったっていう単純なことに気がついて。

あれ、あれだけ毎日食べてたのにって思った時に、ふとね、からだがすっとしている自分が分かったんです。

何か取りたいと思ってた気みたいなものがとれてるっていうのが分かって。

それから、もう別に今は食べたい時だけ、食べるようになったし。

それ以外食べれないんだって思ってたんですけど、もう普通に白米に戻したり、炊き込みご飯に戻したりして、今はいろいろ楽しんで食べてます。

――発酵食品の素晴らしさは?

当時はやっぱり、基本的なことが何も分かってなくって、食事の良し悪しとか、体のしくみとか。陰陽とかね。まったく何も分からずに、もう、よく雑誌で見る栄養論ですよね。

「牛肉食べなきゃだめだよ」とか、「1日30品目」とか、「牛乳飲まなきゃだめだよ」とか。

こういうのを食べないと健康になれないんだと思って努めて食べるんですけど、当時私はやっぱり消化することができなくって、何を食べるっていうよりも、私の消化力が落ちてた。そこにまだ気づいてないですし、それに合う食べ物も分かっていませんでした。

それも全部私、後で分かっていくことなんですけど。

発酵食品のすばらしさって、菌が作ってくれたとか、菌が発酵によって作りだした栄養素とかもあるんですけど、実は菌が分解してくれてて、先に私が消化しなきゃいけない分、半分を、発酵することによって補ってくれてた

だから、私は消化力が半分以下で済んだっていうそのメリットが一番大きかったと思います。

いろんなものが食べれるようになったっていうのは、それは発酵に特化していたんですけど、当時は。消化が良かった食べ物を食べてた。そして、その食べたことによって腸内菌も増えてったっていうダブルの・・・、ですね。

――今はすっかりお元気でご活躍ですが、病気以外でご苦労はなかったですか。

この活動を始めてからは、無いです。それはやっぱり、喜び楽しみで、私がとにかく楽しかった。楽しんでやってたら皆さんが声をかけてくださったっていうだけなので。

で、昔ね、病気が回復し始めた時に、これは大事なことだと思って、皆さんに伝えなきゃって思ってたんですよ。伝えなきゃって思ってた時は、結構、あまり広まらなくって。

で、そっか、力がないのかなとか、興味ないのかなとか思って。

でも、とにかく自分が楽しかったので楽しんでやってたら、そしたら皆さんから声かかるようになったり、教えてとか、お話聞かせてということが多くなって今に至るだけなので、今も基本は変わってません。

とにかく、はい、楽しんで。毎日一人喜んでます(笑) 

――つらかった病状や本名を出すことに抵抗は?

かなり、勇気が要りました。そうですね。今はもうね、結構年とってきて、そういうことが恥ずかしくはなくなったんですけど。やっぱりね、最初はすごく勇気要りました。

あと、名前も顔も出したくなくって、そこもまず葛藤ですね。葛藤があったのと、あと、んーなんですかね・・・。

友達に「発信するなら、名前と顔出ししなきゃだめよ」って言われたんですけれど、本当にそこだけは抵抗があって。

私、一人で静かに隠れて生きてきたので(笑)。

特に人前に立つとか、人に知られるということがすごい苦手で。

で、「何日までに名前をフェイスブックで出しなさい」「本名で出しなさい」って言われて。

その日が来るんですよ(笑)。

何時でその日が終わるので、「あー、もうえいや」って、名前と顔出しをして。

そこまでは葛藤があったんですけど、やってみたら、「あ、なんだこんなものか」って。

――広まると、いろいろな中傷もあったとか?

ただ、あのー、あれですよね。本を出したり、やっぱりその風評被害っていうか。

『豆乳ぐるぐるヨーグルト」って常温で作ったりね。お米とかいろんな素材から作るので、しっかりと開発された菌をぼんっと入れてしまった方が、確実に成功するんですけど。

私達は手づくりグループだったので、身近にあるもので、昔ながらのおばあちゃんたちのように作りましょうとか言ってやってたんです。

やはり、広まれば広まるほど、かなりの風評被害がきて。

最初すごくやっぱりこわかったです。「どうなっていくんだろう」って。

今までの活動も、ヨーグルトがメインではなかったので。

私は「麹を伝える」っていう、味噌とか、酒種酵母を伝えたいっていう夢があったので、豆乳ヨーグルトの風評被害で全部だめになったらどうしようかなって思ってたんです。

それで、出版社の編集の方に相談したんですね。

「他の著者さんでもね、いろんな被害っていうか中傷があると思うんですけど、皆さんどう乗り越えてらっしゃいますか」とか、「どういうことがありますか」と聞いたら。

「いやーもうこれはね有名税と一緒でね。一時ばーってくるけど、だけど消えてきますよ」って。

すごい安直な答えだったんですけど(苦笑)、でも実際にそうでした。

あと、やっぱり自分の中で豆乳ヨーグルトを世に出すと言った時に、かなりの覚悟をもってやったので、誠実に、風評被害がくるのも当然だろうって、それは危険だっていうのも当然。

買ってくるものとか、研究されたものとか、何か発酵止めしているものだけではなくって、生活していれば、家で漬物作るにしても、味噌に漬けるにしても、やっぱりパンにしてもね、いろんなリスクっていっぱいあります。

だけど私はやっぱり皆さんに経験値をあげて欲しい

失敗することもたくさんあるし、だけど、発酵の過程って、ひとつしかないので、素材は違うんですけども。

分解して乳酸菌が表れて酵母が表れて、アルコールになって、酢酸菌になって。

この一連の流れは全部一緒なので、すべて練習だな、経験だなって思います。

批判する方とか中傷してくる方って、やってない方が多いんですよね。で、やらずにしてそれは危険じゃないかっておっしゃるんですけど。

ご自身でやった方は、忠告するにしても、言葉が違いますね。

――人の意識、環境は菌の働きに関係するものですか?

はい、多くの発酵づくりをしていて、本当に不思議なんですけども。

例えば自分が落ち込んでたりとか、ちょっと家族にゴタゴタがあったりとか、不幸があったりとか、引っ越ししたりっていった時に、何かいままで何も考えずに成功していたものが急にダメになる、発酵しないとか。あと冷蔵庫にあったものが、いつの間にか全部ダメになってる、っていう。そんなことがあるんです。

ひとつは環境がおかしくなる場合もあるし、やっぱり、私が、家の中が・・・、っていうこともありますね。これはもう理屈では説明できない。

なので、発酵食を作る以前に、私は家の中の環境を整えるんです。

もちろん人の「気」っていうのもありますけども、私は特にそうじをするんですね。

特別に何か薬剤を使って、もちろんその薬剤にも菌はちょっと弱いので、エコのものがいいんですけども、基本はもうほこりをとって水拭き。これが一番いいと思います。はい。

例えば部屋の中でも冷蔵庫でもそうですけども、ちょっと腐敗したとか、カビがあるとか、汚い場所っていうのは、一回リセットという意味で、私はエタノールは常備してます。

無水エタノールなんですけど。それを薄めてみたり。

あと最近、よくパン屋さんで使われるんですけど、食品ケースに使っても大丈夫っていうもの。この2本を常備してて、いざっていう時はそこで1回リセットして、もう1回発酵を作って、だんだんと何回か作るうちに、部屋の中全体が発酵に適した場所になるんですね。

自宅は、空気の風通し良くして、ものを減らすっていうことをしてて、よく、知り合いの方とか取材の方とかいらっしゃると事務所ですかって言われます。

生活感があまりなかったみたいで。でも、ここで普通に食べてますし、向こうには居間がありますけど、って(笑)。

今でも環境はつねにつねに。土づくりもそうですし、米のとぎ汁があれば昔のおばあちゃんの知恵ですけど、これを何に使えるかなということはいつも考えています。

暮らしながら、研究をずっと続けている?それも楽しんで。

――これからやってみたいことはありますか?

農業です。

やっぱり発酵食品はね、素材はもう畑でできるものなので。

まあもちろん、魚とか肉もありますけども、その食材がどのようにして作られてくるか。

自然栽培っていうか、ちゃんと栽培したものは、そのものがエネルギーが高くって。

よく発酵するし、とにかく美味しいというところですね。

美味しい。楽しい。はい。

――今、人気なのが最新刊の『発酵小豆』と伺いました。

もともとは、麹と水を合わせて甘酒を作ってたんですけども、そのうち、かぼちゃと麹を合わせたり。もともと甘酒づくりって麹と炊いたご飯、おかゆとか合わせて甘酒にしていくんですけども。

麹とかぼちゃにするとかぼちゃ餡ができたり、麹とさつまいもだと、さつまいも餡。そんな感じで、皆さん、いろんな素材を楽しまれいて、その中のひとつで、小豆。

炊いた小豆と米麴を発酵させると、あんこみたいになるよーって。

私、特に砂糖が消化にちょっと苦手で、甘い物大好きなんですけど。

あんこは食べたいんですが、やっぱり小豆と砂糖同量くらい合わせないと美味しいあんこって出来なくって。砂糖を減らせばいいんですけど、はちみつにしたりとか。

で、それが天然の甘みで、たんぱく質とかデンプン質と分解してできる小豆、あんこってすごい素敵だなって思って。

もともと体調を戻す時に、酵素玄米とかぼちゃのいとこ煮、を食べていたんですけど、この2つの共通している食材って小豆だったんですよね。

当時は全然気がつかなかったんですけど。やっぱり小豆には解毒とか利尿作用とか、何かデドックス作用があるなって思います。

そして、昔の人は1日、15日。新月と満月の時にお赤飯にしたり、ぜんざいとして食べたり、おはぎにしたりとか、食べてたと思うんです。

それって分かってたと思うんですよね。どうしても暮らしの中で蓄積していくものって、毒素ってありますので、そのからだの浄化、血を綺麗にするという意味で、1日15日、月に2日間、2日2回食べてたんだと思います。はい。

昔の方はよく分かってたと思います。

豆を甘く煮て食べる文化って、国って、おそらく日本くらいじゃないかなって。もちろん他の国にも多少あるんですけども。外国はお料理に、カレーとか煮込み料理とかね。付け合わせとか。砂糖で甘く炊くっていうことは少ないと思いますね。

日本はその甘さと合わせてしまうので、ご飯として、おかずとしてはあまり食べ難いものなんですけどね、おはぎとかぜんざいとか。

でも私はもっと料理に取り入れたいなと思いまして。

発酵あずきはあんこほど甘くない。自然な素朴な甘さなので、私はワンプレートの時に、ちょっとほんとにティースプーンに一口食べるくらいでも腸によく効くので、ちょっとボールにして、小豆だんごみたいにして、ちょっと添えたりして。

あとヨーグルトも良く合いますし、名古屋の方の、おぐらトースト。私も大好きで、岐阜育ちなので、喫茶店とかに行くと、はい、必ずバターと小豆と、あんこはセットで出てくるので・・・。そんな感じでバターと合わせてもすごく美味しいです。

――Taccoさんがここまでゆるぎなく大切にしてきたことは何ですか?

あの・・・、まず「生きる」ってことですね。

ちょっとその前に、伝えていくことで大切にしてきたことは、とにかく否定をしない、批判をしないっていうところ。

人が私とは違う価値観であったり、違うことをしてたとしても、認めるっていうことを、理解していこうと努めてまして。

そのおかげか、私のまわりの方たちはとても穏やかな方が多くて、攻撃してくる方はいらっしゃらないですね。

私個人として大切にしてきたっていうかこれしかなかったなっていうのは、「生きる」っていうこの3文字だけ。

明日のこととかどう生きようとか、そういうことも考えずに、ただ生かされている命を全うしていく

何も考えず。目の前のことをやっていくっていう。そこだけです。

これを伝えたいなっていう気持ちはあるんですけど、あの、がむしゃらに、とかではなくって、何か私が生まれてきた意味を考えた時に、これはやらなきゃいけないんだろうなっていうその使命感だけです。

――発酵。Taccoさんに学んで、私の暮らしに取り入れたいと思います。今日はありがとうございました。

死ぬ時が人生の最高峰(前編)
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「ほんとうのことが、知りたい」
天道生え(てんとばえ)
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「色を知ると人生楽しくなる」
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